産道感染症って何のこと?
赤ちゃんが
産道(腟)・外陰を通り抜ける際にかかる感染症を
産道感染症といいます。
お産になるまで赤ちゃんは羊水の中で
無菌的に育てられています。この無菌的な環境と“ばい菌”がいっぱいの腟とを隔てている
羊膜が破れる…つまり、
破水が起こると、赤ちゃんは感染の危険にさらされることとなります。流れ出る羊水には殺菌作用があり、赤ちゃん自体もある程度の抵抗力を持っているので、すぐに危険というわけではありませんが、お産の時間が長くなると感染の危険性は徐々に高くなってきます。
統計的には破水後24時間以上が経過すると黄色信号〜赤信号となります。
ですから、赤ちゃんのことを考えると、破水後24時間以内にお産を終了したいものです。もっとも、赤ちゃんのことを持ち出すまでもなく、お母さんご本人もできれば1時間でも、1分でも早くお産を終了したいのが本音でしょうが-----------。
赤ちゃんにとって特に恐ろしい感染症としては、病原体が全身に広がり、多臓器不全を起こす敗血症があげられます。この敗血症を起こしやすい病原体にはいくつかのものが知られていますので、少し紹介しておきましょう。
腟の中にごくありふれて見つかる菌(常在菌)で、妊婦さんの
10〜5人に1人は持っています。この菌をもっている妊婦さん(保菌妊婦)から生まれた赤ちゃんでは、検査をすると
約50%の頻度で菌が発見されます。菌が発見されたからすぐに危ないというのではなく、そのうちの100人に1人の割で、赤ちゃんに
重症感染症が発症します。統計的にその
発生頻度は0.1%以下(2,000〜3,000分娩に1例)とされています。
発症した際の症状は、
「なんとなく元気がない」・「ミルクの飲みが悪い」・「呼吸が安定しない」などといったもので、特に特徴があるわけではありません。しかし、急激に
肺炎・髄膜炎・敗血症に進行し、発症後の死亡率は25〜50%で、救命できても神経系の後遺症が残ることが知られています。
この新生児B群溶連菌感染症は、発症の時期により
早発型と
遅発型の2つのタイプに分けられます。
早発型は出生後7日までに発症するものですが、特に
生後24時間以内が一番危険とされています。
遅発型は生後7日以後に発症するタイプで早発型ほど死亡率は高くありませんが、病院を退院してからの発症なのでやっかいで、お母さん・家族が十分注意する必要があります。あらかじめ“
かかりつけの小児科医”を選んでおき、
「なんとなく元気がない」・「ミルクの飲みが悪い」・「呼吸が安定しない」などといった症状があれば、1ヶ月健診を待たずに小児科受診をした方がよいでしょう。
対策
腟の細菌培養検査で陽性の妊婦さんでは、
分娩時に抗生物質(ペニシリン)を点滴することによって、65%以上感染率を下げることができるとされています。また、アメリカでは、破水後12時間以上経過した妊婦さん・早産の妊婦さん・過去にB群溶連菌感染症児を出産したり、検査データーが不明の妊婦さんでは、
予防的にペニシリンの点滴投与が推奨されています。そこで
本院では、妊娠中期の検査で陽性の妊婦さんには、ペニシリンの飲み薬を服用していただき、妊娠末期の再検査で陽性が続いている場合には、ペニシリンの点滴投与を行っています。また、妊娠末期に新たに陽性となった場合も、同様の点滴投与を行っています。
単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、いずれによる感染症も“水ぶくれ(水疱)”を作り痛みを伴うのが特徴です。お産の時にお母さんに性器ヘルペスが存在すると、このお母さんの感染が初めて(初感染)の場合では約50%、2度目以降(再発型・誘発型)の場合では1〜3%の頻度で赤ちゃんに産道感染が起こってしまいます。新生児ヘルペス感染症は、(1)全身型、(2)中枢神経型、(3)皮膚型の3つのタイプに分類されますが、全身型は最も重篤で、生後1週間以内に発症して全身の臓器に広がり、抗ウイルス剤を投与しても多臓器不全のため30%が死亡してしまいます。中枢神経型は死亡率は低いものの、2/3に重篤な神経系の後遺症が残ってしまいます。
対策
お産の時に性器ヘルペスがある場合は帝王切開術が行われます。お母さんが初感染の場合は、発症より1ヶ月以内であれば帝王切開術が、1ヶ月以上たっていればふつうのお産(経腟分娩)が選択されます。お母さんの感染が2度目以降である場合は、発症より1週間以内であれば帝王切開術が、1週間以上たっていれば経腟分娩が選択されます。ただし、新生児ヘルペス感染症になった赤ちゃんの70%では、お産の際にお母さんに性器ヘルペスが認められていないので、一筋縄ではいかない一面があります。
いずれにしろ、妊娠中の外陰部にできた“痛みを伴う水ぶくれ(水疱)”は要注意ですから、できた場合は受診時に相談して下さい。
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くちびるの端にできる痛みと水ぶくれを伴う吹き出物は、口唇ヘルペスで1型ウイルスにより発症し、女性の外陰部や男性の陰茎にできる同じ症状の吹き出物は、性器ヘルペスで2型ウイルスにより発症すると考えられてきましたが、最近では性習慣の変化(オーラルセックス)により1型と2型の領域区分があいまいになってきています。 |
お産の前後にお母さんが水ぼうそうにかかると、赤ちゃんも2〜4人に1人の割で水ぼうそうにかかります。赤ちゃんの水ぼうそうの重症度はお母さんから胎盤を経由してもらう抗体の量に依存していますので、お母さんの発症とお産までの時間関係が重要なポイントになってきます。
- お母さんがお産の6日以上前に発症した場合は、赤ちゃんは生後当日〜4日に水ぼうそうになる可能性がありますが、お母さんからすでに水ぼうそうの抗体をもらっているので重症化することはありません。
- お母さんの発症がお産の5日前から産後2日までの場合は、赤ちゃんは生後5〜10日に発症し、お母さんから抗体を十分もらっていないので重症化します。
肺炎・脳炎などを起こすことが多く、死亡率は30%にもなります。
- お母さんの発症が産後3日以降の場合は、お母さんの体内で水ぼうそうのウイルスが多くなる前にお産となったと考えられ、胎盤を経由しての赤ちゃんへの感染はなかったと考えることができます。ただし、胎内感染がなかったというだけで、育児中にお母さんから感染(水平感染)する危険性はあります。
対策
- お産間近の時期にお母さんが水ぼうそうにかかった場合は、発症からお産までの期間が延長できるよう、場合によってはお薬を使って時間稼ぎをします。つまり、この時間稼ぎの間に、お母さんの体内で抗体ができ、できた抗体が胎盤を経由して赤ちゃんに行き、赤ちゃんを重症化から守ることを期待するわけです。
- お母さんの発症が産後3日以降の場合は、皮疹がカサブタになるまで赤ちゃんをお母さんから隔離します。
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- 成人の90%が子供の時に水ぼうそうにかかっていて、抗体を持っています。不確かなら、あなたのお母さんに尋ねてみるとよいでしょ
う。また“かかったかどうか心配”という方は、抗体検査を いたしますので、ご相談下さい。
- 妊娠中に水ぼうそうにかかると、赤ちゃんは先天性水痘症候群(皮膚の瘢痕・四肢の発育異常・脳の萎縮・白内障などになる危険性があるとされていますが、幸い日本ではまだ見つかっていません。だだし、お母さんの方は大人になってからの感染のため、肺炎や肝炎を起こし重症化することがまれにあります。
- 上のお子さんが水ぼうそうにかかった場合、他の人(新生児を含む)への感染力は、症状が出る48時間前からカサブタができるまで続きますのでご注意下さい。この間は、赤ちゃんからの隔離が必要です。
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