山本産婦人科(三重県津市)の更年期障害・閉経・尿失禁・頻尿についてのページです。

更年期を健やかに

閉経って何?更年期ってどの時期?

閉経とは、「卵巣における卵胞の消失による永久的な月経の停止」とWHO(国連世界保健機関)により定義されています。実際的には、45歳以上の女性で1年間以上月経を認めなければ閉経とみなされます(1年以内の無月経では、月経が再開することがありますが、1年以上であれば月経の再開は稀なため閉経と判断されるわけです)。
日本人の閉経年齢は平均50.5歳で、45〜56歳が正常範囲とされています。43歳未満で閉経する場合は早発閉経と考えられ、卵巣機能不全として治療の対象となります。
更年期とは「性的成熟状態から、卵巣機能が完全に消失するまでの期間」と国際産婦人科連盟(FIGO)により定義されていますが、実際的には閉経を挟んで前の5年(閉経前期)と後の5年(閉経後期)の計10年間を指していると理解して下さい。

閉経ってどうして起こるの?

卵胞の閉鎖に基づき生理的な不可逆的・卵巣機能低下により起こります。
卵胞の閉鎖は、単に排卵により卵が消費されたためではなく、遺伝子に組み込まれたプログラム=生物時計によって起こってきます。したがって、経口避妊薬によって排卵を長期間抑制し卵を節約したとしても、決して閉経が遅くなるというものでもありません。

更年期のホルモン状態は?

卵巣機能の低下が基盤にあるわけですから、卵巣からの卵胞ホルモン(エストロゲン)分泌が低下します。排卵も起こらず黄体が形成されないため、当然黄体ホルモン(プロゲステロン)も低値になります。その反面、脳下垂体からは卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)が、卵巣を叱咤激励しようとして盛んに分泌されるため高値となります。したがって、FSH・LHとエストロゲン・プロゲステロンを測定すれば、その人がおよそどの時期に位置しているかが判定できます(脳下垂体と卵巣のホルモン調節についてはこちらを参照して下さい)。

更年期障害ってどんな症状が出るの?

まず、エストロゲンが低下・欠乏することによって起こる更年期以降の症状の出現順序についてタイムテーブルから理解して下さい。
エストロゲン欠乏症状のタイムテーブル
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更年期指数

更年期障害はご本人の訴え(自覚症状)がほとんどで、他人からわかる所見(他覚的所見)に乏しいのが特徴です。そこで、ご本人の訴えを点数化して評価しようとするのが更年期指数です。欧米ではクッパーマン更年期指数がしばしば用いられていますが、項目が多くて使いづらく、日本人向きでないことから、簡略更年期指数(SMI、小山)がよく用いられています。

簡略更年期指数

あなたは現在、次のような症状がありますか。
該当する症状の程度にをつけ、点数の合計を出してみましょう。

症  状 症状の程度 点数
 
●顔がほてったり、のぼせたりしますか。 10  
●汗をかきやすいですか。 10  
●腰や手足が冷えますか。 14  
●心臓の動悸がありますか。 12  
●夜、寝つかれないことがありますか。 14  
●怒りやすく、イライラすることが多いですか。 12  
●ゆううつになることが多いですか。  
●頭痛、吐き気、めまいがありますか。  
●疲れやすいですか。  
●肩こり、腰痛、手足の関節に痛みがありますか。  
  合計       点


更年期指数の判定
25 ----- 問題ありませんが、年1回の健康診断を受けましょう。
26 50 ----- バランスのよい食事を摂り、適度な運動を行い、更年期障害の予防に努めましょう。
51 65 ----- 産婦人科を受診し、適切な治療を受けましょう。
66 80 ----- 6ヶ月以上の計画的な治療が必要です。
81 100 ----- 産婦人科以外に各科(心療内科・精神神経科など)の精密検査を受けましょう。特に異常が認められず、更年期障害と診断された場合は、産婦人科での計画的な治療が必要です。
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月経異常

更年期にまず起こる症状が月経異常ですが、以下のような特徴的な発症順序があります。
1)まず、月経周期が短くなり、頻回となりやすい。
FSHが高値となり、卵胞の発育が促進され、黄体期が短縮するため月経周期が24日以下(頻発月経)となることが多くなります。
2)次いで、不規則な出血が断続しやすくなる。
卵胞数が減少し、FSHがさらに高値となりますが、卵胞の反応性が悪くなり、途中で発育が停止するようになり閉鎖するため、更年期出血(機能性出血)をきたすようになります。ただし、一応子宮内膜癌(子宮体癌)のスクリーニングを受けておいた方がよいでしょう。
3)次いで、月経の間隔が間延びするようになる。
さらに卵胞の発育に多くの日数を要するようになるため、稀発月経となります。
4)ついに1年間月経が来なくなり、閉経と判断される。
さらに卵胞数の減少と反応性の低下が著明となり、FSH・LHが上昇しますが、ついに卵胞発育が全く認められなくなります。
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自律神経の失調症状

*どんな症状ですか?

血管運動神経症状である“ほてり・のぼせ感”と“発汗”の発作が主症状です。アメリカでは、“ほてり・のぼせ感(hot flush)がなければ更年期障害とは言わない”と定義されていることからも、ほてり・のぼせ感が更年期障害の典型的症状といえます。
  1. ほてり・のぼせ感(熱感・顔面紅潮感)”は頭部・顔面から頸部を経て胸部・背部に拡がったり、胸部から始まって頸部・顔面に上昇したりします・この際、頭の圧迫感があったり、脈が速くなり動悸を感じることもあります。
  2. ほてり・のぼせ感”の直後には頭部・顔面から胸部・背部にかけて著しい“発汗”をきたすことが多いのですが、逆に冷感・悪寒を感じることもあります。
  3. 発作時間は1〜10分で1日1〜10回起こることが多いのですが、1時間に数回起こる人から1週間に1回程度の人まで個人差があります。
  4. 閉経婦人の60〜70%に認められる症状ですが、治療を受けていない場合は、通常閉経後数年間(2〜5年以上)は続きます。閉経後5〜10年では40%、閉経後10年以上経過した場合は4%に低下するとされています。

*更年期障害以外に何かまぎらわしい病気は?

“ほてり・のぼせ感”のある場合は、1)甲状腺機能亢進症、2)高血圧、3)肥満などが
ないかどうかを検討する必要があります。
甲状腺機能亢進症の“ほてり・のぼせ感”は全身性なのに対し、更年期障害では上半身にほてり・のぼせ感があり、下半身は冷えることが多い特徴があります。

*どんな治療があるのですか?
  1. ふだんからスポーツをしたり、よく体を動かす人の方が“ほてり”の頻度が低いといわれていますので、適度な運動を心がけましょう。
  2. 深呼吸すると交感神経の緊張が軽減し、症状が和らぐことがあります。
  3. 精神的な緊張やストレスが“ほてり”を誘発したり、程度をひどくするので、生活環境の見直しをしてみましょう。
  4. ホルモン補充療法(HRT)が奏功します(ホルモン補充療法についての詳細は別項を参照して下さい)。
    • 通常、エストロゲン製剤(プレマリン1錠=0.625mg/日)の服用で、2〜4週間後には症状は軽快または消失します。服用を中止すると症状が再発することが多いので、少なくとも1年以上の治療が必要です。
    • エストロゲン製剤単独療法の副作用を避けるために、通常プロゲストーゲン製剤(プロベラ1錠=2.5mg)を一緒に服用します。
    • 1〜2ヶ月服用してもよくならなければ、甲状腺機能亢進症のような他の病気を考える必要があります。
  5. ホルモン補充療法が不向きな人には、漢方薬も用いられます。

  6. 更年期障害と漢方薬の選択

    症状


    漢方






















    当帰芍薬散          
    加味逍遙散    
    桂枝茯苓丸            
    桃核承気湯        
    女神散      
    四物湯                  
    通導散            
    温経湯              
    (矢内原ら、1985)
    実証:ガッチリ型の比較的体力のある人
    虚証:やせ型できゃしゃな人

  7. 自律神経調整剤も用いられることがあります。
  8. グランダキシン:1回1錠(50mg)、1日3回
  9. その他の薬
  10. カリクレイン、ビタミンE、メサルモンFなどが用いられます。
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精神神経症状

不眠・不安・憂鬱・頭重感などが出ることがあります。ただし、これらの精神神経症状には社会的環境・個性などが大いに影響するだけでなく、心配事が原因で心因性反応として身体的変調をきたしている可能性も考えられます。したがって、産婦人科よりも心療内科精神神経科での治療が望ましい場合もあります。

*更年期障害以外に何かまぎらわしい病気は?


精神疾患
うつ病、心気症、不安障害(パニック障害)などの精神疾患がありますが、特に“仮面うつ病”は全身倦怠感や肩こりなどの身体的症状が表に現れ、更年期障害と区別することが難しいことがあります。
うつ病では、午前中の方が抑鬱症状が強い特徴がありますから、
朝すぐに起きれませんか?
朝刊を読むのがおっくうではないですか?
の質問に「イエス」の場合は、仮面うつ病を疑う必要があります。

空の巣症候群(Empty Nest Syndrome)
子育てから解放されたり、夫が単身赴任で別居生活を余儀なくされたりすることが引き金となって陥る“うつ状態”を空の巣症候群といいます。「巣立った鳥の巣」のような「空虚感」からアメリカの社会心理学者によって名付けられたものですが、1)子育てに代わる趣味を持ったり、2)仕事に没頭したり、3)友人とつきあったり、4)夫との関係を良好に保ったりすることで回避することができます。

★精神症状の治療

ホルモン補充療法によって“ほてり・のぼせ感”などの血管運動神経障害が改善することによって、間接的に精神症状も軽減することもありますが、原則としては、うつ病にホルモン補充療法は効果がないと考えて下さい。
ホルモン補充療法で効果が得られない場合は、漢方薬・抗不安剤・抗うつ剤などを併用しますが、重症の場合や治療効果が得られない場合は、精神神経科を受診して適切な治療を受けることが必要です。

ものわすれ(記憶障害)
“ものわすれ”は健康な人にもみられる現象であるものの、老化の過程で加速することも事実です。
女性ホルモン(エストロゲン)には、脳血流量を増加させ、記憶に重要な役割を演じている脳の部分(海馬と呼ばれる部分)の機能を維持する働きがあると考えられています。また、手術のために両側の卵巣を切除された人にホルモン補充療法を行うと、記憶力の低下を抑えることができたという報告もあります。したがって、“ものわすれ”が老化現象であることは確かですが、エストロゲンの低下も微妙に関係しているものと思われます。

アルツハイマー病とエストロゲン
アルツハイマー病は、記憶障害から始まり、徐々に失語・失行などの高次脳機能障害が現れ、最終的には人格崩壊・寝たきりに陥る病気ですが、エストロゲンに改善効果のあることが知られています。これは、エストロゲンが神経伝達物質(アセチルコリン)の合成や放出を促進したり、損傷された神経細胞に修復効果を発揮することによっているものと考えられています。

内科疾患

内分泌疾患(甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症・副腎機能低下症・クッシング症候群など)、膠原病、脳腫瘍、代謝性疾患などによって精神神経症状をきたすことがあります。スクリーニング検査で基礎疾患が発見された場合は、専門医に治療が委ねられます。
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泌尿生殖器症状

老人性(萎縮性)腟炎

老人性”という名前に抵抗を覚える人も多いと思います。もっとソフトに表現すれば、“加齢性”腟炎ということになります。つまり、加齢に伴ってエストロゲン分泌が全くなくなってしまうと、エストロゲンに依存して厚さを保っていた腟粘膜(重層扁平上皮)が薄く(菲薄化)なり、物理的な抵抗力が低下します。また、腟内のグリコーゲン含有量が低下することにより乳酸の産生が減少し、腟内の酸性度がアルカリに傾くため自浄作用が保てなくなります。その結果、雑菌が繁殖して炎症が起こり、“おりもの”が増加するのが老人性腟炎です。したがって、治療は腟洗浄を行った後、腟錠としてエストリール(エストロゲン製剤)とクロマイ(抗生剤)を挿入します。通常1週間程度で軽快しますが、加齢による変化のため繰り返すこともしばしば認められます。

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性交痛

加齢に伴うエストロゲン分泌の低下は、性器の萎縮をきたすため性交時に疼痛を認めるようになります。性交痛の頻度は、40〜49歳では28%、50〜54歳では43%、55〜59歳では57%、60〜64歳では90%と報告(広井、1990)され、更年期婦人の共通の悩みであることがわかります。ただ、羞恥心ゆえに産婦人科を受診してもなかなか言い出しづらい訴えであるのも事実で、つい言いそびれてしまいがちと思われます。気軽に相談していただければいいのですが、躊躇する場合は、問診票の主訴の欄に「夫婦生活の時の痛み」などと記載していただければよいでしょう。
治療は、ホルモン補充療法がよく効きます。エストロゲンは頚管粘液の分泌を促し、腟の乾燥感をなくし、性行為を円滑にします。
また、リューブゼリーという水溶性の潤滑ゼリーが産婦人科やドラッグストアで購入可能ですから、性行為の前に外陰部に塗布して腟の湿潤性を改善しても効果があると思います。最近では便利な1回ごとの使い捨て容器入りのものが市販されています。詳しくは産婦人科でお尋ねいただくか社団法人・日本家族計画協会にお問い合わせ下さい。

性欲について
男女とも性機能は加齢に伴って低下しますが、男性の性欲低下が緩やかであるのに対し、女性では急激に起こるのが特徴です。性器の萎縮に伴う性交痛などが主な誘因となっていますが、性生活は夫婦間の愛情を深め、結婚生活の重要なコミュニケーションの手段とも考えられますから、ご心配なら受診して相談して下さい。
なお、ホルモン補充療法は、性交障害の改善を介して性欲に間接的な影響を及ぼす可能性はあるものの、直接的には影響しないというのが一般的な考え方であり、男性ホルモン(テストステロン)が女性においても性欲亢進作用を持つとされています。
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尿失禁

自分の意志に反して尿漏れをきたす場合を尿失禁といいますが、男性比べて女性では尿失禁の頻度は高く、40歳以上の健康婦人の約41%が尿失禁で悩んでいるという報告(長井ら、1992)もあります。これは女性の尿道が短く直線的であり、腹圧に対抗して膀胱や尿道を支えている筋肉(骨盤底筋)が出産という負荷がかかることにより緩み、膀胱や尿道を十分に支えきれなくなることが主な原因と考えられています。さらに、エストロゲンが低下してくると、1)尿道粘膜や粘膜下組織が萎縮・硬化し、2)尿道内圧を保つのに役立っている血管床(尿道を取り囲んでいる血管網)が減少し、3)交感神経受容体(αアドレナリンレセプター)が減少することにより尿漏れに拍車がかかることになります。

尿失禁の危険因子
加齢以外で尿失禁になりやすい要因には、以下のようなものがあります。
◆妊娠・分娩
妊婦さんの30〜60%は妊娠中に尿失禁を経験するといわれています。この妊娠中の尿失禁は一時的なものが多く、たいていは分娩後に回復します。ただし、妊娠中に尿失禁を経験した女性では閉経後にも尿失禁をきたしやすいとされています。
分娩回数が増えれば増えるほど尿失禁の頻度が増加しますが、高齢になると必ずしも分娩回数と尿失禁の頻度とは相関せず、高齢発症には、他の因子もからんでくるものと考えられます。
◆子宮摘出手術
子宮筋腫などの理由で子宮全摘術を受けた人では、尿失禁の頻度が高くなるとされています。これは、手術操作によって膀胱支持組織に緩みが生じることなどが原因で起こるものと考えられます。
◆肥満
肥満度を表すBMI(Body Mass Index)や体重の増加が多くなればなるほど尿失禁の頻度が高くなり、しかも重症度も上がることが知られています。これは、肥満に伴う体重増加が骨盤に荷重をかけ、骨盤底筋を進展させ、弱くすることにより引き起こされているものと考えられます。

尿失禁の種類
更年期婦人の尿失禁には、以下のような腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の2つのタイプがあります。約50%が腹圧性尿失禁、約20%が切迫性尿失禁、約30%が混合性尿失禁(腹圧性と切迫性が合併する失禁)とされています。
*腹圧性尿失禁
咳をしたり”、“大笑いをしたり”、“運動をしたり”して起こる女性に一番多くみられるタイプの失禁で、尿道抵抗の低下が原因となっています。これは分娩などによって骨盤底を支えている筋肉(骨盤底筋)が弱くなったり、エストロゲンの低下により尿道粘膜が萎縮したり、柔軟性が低下したりするために引き起こされます。
★腹圧性尿失禁の検査
パッドテストといって、腹圧をかける動作によって起こる尿失禁の量を紙おむつを使って測定します。また、チェーン膀胱造影というレントゲン検査で、尿道と膀胱との角度(後部尿道膀胱角)が計測されます。腹圧性尿失禁では後部尿道膀胱角が大きくなります。

パッドテスト

検査前: このテストは排尿しないで始めます
最終排尿時間…[午前・午後]  時  分
パッドの重量測定(   g):a
0分 開始…[午前・午後]  時  分
パッドを装着する
飲料水500mlを15分以内で飲み終える
椅子またはベッド上で安静
15分 歩行を30分間続ける
階段の昇りと降り1階分
45分 1)椅子に座る、立ち上がるの繰り返し×10回
2)強く咳き込む×10回
3)1カ所を走り回る×1分間
4)床上の物を腰をかがめて拾う動作×5回
5)流水で手を洗う×1分間
60分 終了
パッドの重量測定(   g)b
排尿して尿量測定(   ml)
失禁量 ba=(     ) g
判定  2g未満 ・・・ 尿禁制
 

10




10
50
g
g
g
・・・
・・・
・・・
軽症
中等症
重症
50g以上 ・・・ 極めて重症

★腹圧性尿失禁の治療
骨盤底筋訓練
咳やくしゃみが出そうな時や重い荷物を持ち上げる時には、腹圧がかかることになりますが、日頃からこのような時に意識して骨盤底筋を締めて漏れを防ぐ訓練が大切でしょう。ただし、お尻や太ももをきつく締め、膝を合わせる動作を繰り返しても尿道括約筋や骨盤底筋の訓練にはなりません。あくまでも肛門や腟を引き締める意識を持つことが大切です。
肛門や腟を引き締める感覚がわかりにくい人は、「フェミナコーン」という骨盤底筋の訓練器具が市販されていますから利用してみてもよいでしょう。この器具は、同じサイズで重さの異なる円錐形の重りがセットになったもので、1日2回:1回約15分間腟内に挿入して歩行し、脱落しなくなれば順次重いものに換えていきます。この器具を使用すると、どこをどのように引き締めたら骨盤底筋の訓練になるかがよくわかるとともに、筋力アップの程度を自己評価することもできます。1ヶ月のトレーニングにより、尿失禁が軽症・中等症の人では70%以上で効果が得られるとされています。詳しくはセンシンメディカル株式会社(電話:03−5802−0560)にお問い合わせ下さい。

 ★フェミナコーン

骨盤底筋の訓練法には、尿道・腟・肛門周囲の筋肉を収縮させるケーゲル法(下図)がありますが、「フェミナコーン」と組み合わせると、より効果が得られるとされています。
骨盤底筋体操(ケーゲル法)
A
(1)仰向けに寝て、両足を少し離す
(2)骨盤底筋(肛門・腟・尿道付近の筋肉)を収縮させて3秒静止
(3)ゆっくり元に戻す

※5〜10回繰り返す
B

(1)床にひざをつき、ひじをクッションにのせる
(2)骨盤底筋を収縮させて3秒静止
(3)ゆっくり元に戻す

※5〜10回繰り返す
C
(1)背筋を伸ばし、つま先を45度開いていすの横に立つ
(2)太ももをぴったり合わせ、おしりを引きしめる感じで骨盤底筋を収縮させる
(3)ゆっくり元に戻す

※5〜10回繰り返す
D
(1)足を肩幅に開いて立ち、手は机に
    のせる
(2)骨盤底筋を収縮させて3秒静止
(3)3秒かけてゆっくり元に戻す

※5〜10回繰り返す
E

(1)仰向けに寝て、両ひざを軽く曲げる
(2)骨盤底筋を収縮させたまま、おしり、背中をゆっくり持ち上げ、ゆっくり下ろす

※5回以上繰り返す
F

(1)仰向けに寝て、両ひざを軽く曲げる
(2)骨盤底筋を収縮させたまま、顔をひざと同じ高さになるまで起こし5秒静止
(3)ゆっくり元に戻す

※3回繰り返す
(頻尿・尿失禁、阿曽佳朗監修、東洋出版、1993より)

また、日本コンチネンス協会のホームページに骨盤底筋訓練法が紹介されていますから参考にして下さい。
薬物療法
腹圧性尿失禁の場合には、通常次のような薬物療法が行われます。
*スピロペント(塩酸クレンブテロール、1回2錠・朝夕1日2回):
この薬は、膀胱平滑筋を弛緩させ、外尿道括約筋の収縮を増強することによって効果を発揮しますが、甲状腺機能亢進症・高血圧・心疾患・糖尿病などの人では、服用に注意が必要とされています。
*その他の薬剤
エフェドリン(塩酸エフェドリン)、トフラニール(塩酸イミプラミン)、漢方薬(葛根湯、補中益気湯、八味地黄丸)など。
*ホルモン補充療法
ホルモン補充療法は、腹圧性尿失禁にもある程度の効果が期待できるとして従来行われてきました。
しかし、2005年に行われたアメリカでのWHI試験の解析(対象:50〜79歳の健康な閉経後の女性27,347例)の結果からは、ホルモン補充療法がむしろ尿失禁を悪化させる傾向にあることがわかりました【結合型エストロゲン(プレマリン)単独療法の場合、尿失禁率が1.32倍に上昇】。
したがって、尿失禁をよくするという目的のためだけにホルモン補充療法を受けることは好ましくないと思われます。

手術療法
骨盤底筋訓練や薬物療法が効果を発揮しなかったり、パッドテストで尿失禁量が
10gを超え、日常生活に支障をきたす場合は、泌尿器科での手術療法が考慮されます。TVT手術(TVT:Tension-free Vaginal Tape)や腹腔鏡下でのBurch手術などが行われますが、数年後に尿失禁が再発することもあるため、骨盤底筋訓練は引き続き続けた方がよいでしょう。
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切迫性尿失禁

尿意が強くて、トイレに走る途中で我慢できずに失禁するタイプで、膀胱が過剰に反応して抑制のきかない収縮が起こることによる尿漏れです。脳血管障害などの中枢神経系の異常による神経因性膀胱が原因のこともありますが、更年期以降ではエストロゲンの低下によって尿道粘膜が萎縮し老人性尿道炎という炎症を起こしやすく、この炎症反応が刺激となって頻尿切迫性尿失禁が生じてしまいます。
★切迫性尿失禁の治療
薬物療法
抗コリン剤といって膀胱の排尿筋を弛緩させるお薬が効果的です。ポラキス(塩酸オキシブチニン・1日3回)、バップフォー(塩酸プロピベリン・1日1回)、デトルシトール(酒石酸トルテロジン・1日1回)などが用いられますが、夜間の頻尿や尿失禁では就寝前に服用するとよいでしょう。
残尿感が強い場合は、膀胱容量を増大させ、尿意の発現を遅らせ作用のあるブラダロン(塩酸フラボキサート・1日3回)が用いられることもあります。
なお、これらの薬剤は抗コリン作用により眼圧を上昇させる可能性があるため、緑内障の人では服用できません。
従来有効とされてきたホルモン補充療法については、アメリカで行われた米国WHI試験の解析結果(2005年)から、むしろ悪影響があることがわかりました。結合型エストロゲン(プレマリン)単独療法および結合型エストロゲン・酢酸メドキシプロゲステロン併用療法の尿失禁率はそれぞれ2.15倍、1.87倍に上昇したとのことです。したがって、尿失禁をよくするという目的のためだけにホルモン補充療法を受けることは好ましくないと思われます。
膀胱訓練
尿意をがまんする膀胱訓練を行い、排尿間隔を少しずつ長くすることで膀胱容量を増加させることができます。
最初はトイレに行きたい時に毎回5分間我慢することから始め、我慢の時間を10分間、15分間と少しずつ焦らず時間をかけて延ばすようにして下さい。3時間の排尿間隔があき、排尿を自分の意思でコントロールできる状態を目標にしますが、あくまでも数ヶ月かけての訓練プログラムと考えて、決して焦らないで下さい。
排尿を我慢すると膀胱炎になると思われる人もいるかもしれませんが、基礎疾患(無症候性細菌尿など)がない限り、心配する必要はありません。
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頻尿

一般的には、切迫性尿失禁の軽症型が「頻尿」と考えられます。健常人では、平均的に尿意を3〜5時間毎に感じ、1日の排尿回数は5〜6回で、中高齢者になると就寝中も1回程度排尿のために目覚めるとされています。したがって、昼間で8回以上、夜間で2回以上の排尿がある場合は頻尿と考えてよいでしょう。
頻尿の原因と治療
1)糖尿病
血糖が高く、多飲・多尿がある場合は、糖尿病が考えられますから内科管理が必要となります。
2)泌尿器疾患
残尿(排尿した後も膀胱内に残っている尿)が多かったり、尿検査などで異常がある場合は、下部尿路閉塞や腫瘍・結石などの泌尿器科疾患を除外する必要がありますから、泌尿器科で精密検査を受けていただくことになります。
3)細菌性膀胱炎
大腸菌などの尿路感染によって起こる細菌性膀胱炎の場合は、頻尿の他に、排尿痛・残尿感・血尿などが認められます。一度膀胱炎に罹った人は、再発しやすい傾向にありますが、抗生物質の服用で通常数日で治ります。治療期間中は水分摂取に心がけ、むしろ排尿回数を増やして“自分の尿で膀胱を洗い流す”くらいの意識でいたほうが治療効果が上がると考えて下さい。
4)神経性頻尿
神経性頻尿の場合は、覚醒時のみの頻尿で夜間は頻尿をきたしにくい特徴があります。精神安定剤のセルシン(ジアゼパム)やメイラックス(ロフラゼプ酸エチル)が効果的です。

尿道カルンクル

尿道カルンクル(Urethral Caruncle)というのは、中高年女性の外尿道口部の主として尿道後壁から発生するアズキ〜エンドウ大の柔らかくて赤い良性腫瘍です。出血しやすいため下着に血液が付着することから産婦人科を訪れることも多いのですが、排尿障害や血尿をきたしたり、感染によって疼痛や膿尿を認めたりすれば治療の対象となりますが、症状がなければ何ら処置をすることなく経過観察でよいでしょう。症状が強くて治療が必要な場合は、局所麻酔下で簡単に電気切除することができます。