性行為によってセックスパートナーに感染する病気を性行為感染症 (STD:sexually
transmitted diseases)と言います。性行為感染症には色々な種類がありますが、感染は 単に一時的なものではなく、 (1)重症の骨盤内感染症などの合併症を起こしたり
することによって将来に渡って多くの問題を山積することになりかねません。(2)不妊症の原因となったり (3)母子感染を起こして胎児・新生児に影響を及ぼしたり (4)発癌に関連したり (5)エイズのように死の危険に陥ったり 性行為感染症の増加の背景には、最近の社会風潮として性の自由化があげられますが、初交年齢の早まり、複数のパートナーとの性交渉の急増、オーラルセックスの普及、コンドーム使用の不徹底などが誘因となっていると思われます。 厚生労働省の感染症動向調査(2000年度調査)で明らかになったことは、性行為感染症の全例を男女差でみると、若年層では女性が男性に比べて明らかに多く、10〜14歳:7.09倍、15〜19歳:3.42倍、20〜24歳:2.04倍、25〜29歳:1.31倍となっています。特に女性にとって性行為感染症は進展性(重症化)、持続性(影響が残りやすい)、継代性(母子感染)が問題となりますので、無防備なセックスを避け、疑いがあれば早く検査を受け、必要に応じて適切かつ十分な治療を受けるべきでしょう。 らせん状をした嫌気性細菌トレポネーマ・パリダムによる全身性慢性感染症です。 昔は性病の代表疾患でした。その後、しだいに減少していましたが、近年若干の増加傾向がみられています。 症状のある顕症梅毒と症状のない不顕症梅毒がありますが、顕症梅毒では病期を3期に分けます。 第1期(感染後3ヶ月くらいまで)第2期(感染後3ヶ月〜3年くらいまで)第3期(感染後3年以上を経過)hemagglutination test)定性法を組み合わせて行い、いずれか1法が陽性に出た場合は、確定診断のためにさらに詳しい検査を行います。 梅毒の治療を駆梅療法といいます。通常、抗生物質のペニシリン製剤の内服をしていただきますが、第1期梅毒では2〜4週間、第2期梅毒には4〜8週間、第3期梅毒には8〜12週間の服用が必要とされています。 セックスパートナーも同時に検査し、治療することが大切です。また、服薬期間が長くなることがありますが、自己判断で中断することなく指示通り続けることが必要です。 粘膜の接触感染ですから、皮膚などから感染することはまずありません。 梅毒はペニシリンによく反応する病気ですから、指示通りの治療を受ければ再発はありません。中途半端な治療であれば梅毒の再燃はあるでしょう。また、同じような感染の機会があれば、再感染が起こるでしょう。 妊娠中に梅毒が見つかった場合は、同様のペニシリンの内服治療を行います。妊娠末期に梅毒が発見されて、分娩までに治療期間が不十分と判断された時はペニシリンの注射療法を行います。念のため赤ちゃんに感染が起こっていないかどうかを臍帯血の検査(
結婚前後にブライダル・チェックとして検査を受けておかれることをお勧めいたします。 最近やや増加傾向にあり、しかも抗生物質が効きにくい耐性菌の出現が問題となってきています。 性感染症で1番頻度の高い病気です。性の自由化に伴って若者を中心に蔓延し、感染者は生殖年齢層で今や100万人に迫ってきています。 性行為感染症で2番目に頻度の高い病気です。産道感染を起こして赤ちゃんに感染が起こると死亡率が高いので、特に妊娠中は注意が必要です。 ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染によって起こります。外陰部〜肛門周囲にかけてイボのようなものができるのが特徴です。 世界のHIVウイルス(Human Immunodeficiency Virus)感染者数は3、940万人に達し(2004年)、国連合同エイズ計画と世界保健機関は、成人感染者の半数近くを占める女性の緊急対策が重要とする報告書を公表しています。サハラ砂漠以南のアフリカでは、15〜24歳の感染者の約75%が女性で、女性感染者の世界的な増加が深刻化しています。 中国・インドネシアを中心とする東アジアでは感染率が50%増加(2004年)し、東欧・中央アジア・ウクライナ・ロシアでも増加が目立ってきています。 感染経路は性行為、薬物など注射の回し打ち、母親から赤ちゃんへの母子感染などがありますが、日本では圧倒的に性行為によるものが多くみられます。 厚生労働省の集計によれば、1985年に初の患者が確認されて以来、2005年までの20年間で累計は1万1千人(HIV感染者とエイズ発症患者の合計)を超え、感染・発症率の増加に歯止めがかからない状況が続いています。先進国の多くで感染者が横ばいとなっていることを考えると、日本は憂うべき現状にあるといわざるをえないでしょう 急性期(感染初期)無症候期(無症候性キャリア期)エイズ関連症候群あるいはエイズ発症期さらに免疫機能が高度に障害されると、免疫不全状態となって、カリニ肺炎などの日和見感染症、カポジ肉腫などの悪性腫瘍、HIV脳症などを発症してエイズ(AIDS: Acquired Immunodeficiency Syndrome)となり、生命に危険が及ぶようになります。 症状があるのは感染初期とエイズ関連症候群になってからであり、初期のインフルエンザ様の症状があってもエイズ検査が行われない可能性があり、また行ったとしても抗体検査が陽性にならない時期のこともあります。 HIVに感染した無症候期の女性が産婦人科を受診するきっかけは、他の性行為感染症(クラミジア・淋病・梅毒・ヘルペス・難治性のカンジダなど)のことが多いので、これらの感染症があった場合はエイズウイルスの混合感染を除外するため、エイズ検査を積極的に受けた方がよいでしょう。 酵素抗体法(ELISA法)あるいはゼラチン粒子凝集法(PA法)によりHIV抗体検査が行われます。検査が陰性であれば、一応HIV感染は否定されますが、感染のリスクが高く、感染初期の可能性が考えられる場合には、数週間後に再検査が必要です。つまり、感染していても1ヶ月以上(平均6〜8週間)経過しないと抗体反応が陽性とならない場合があるので、“みせかけの陰性”に注意する必要があるわけです。 酵素抗体法またはゼラチン粒子凝集法によるHIV抗体検査が陽性の場合には、ウェスタンブロット法(WB法)や核酸増幅法(PCR法:Polymerase Chain Reaction)が実施されます。HIVにはHIV−1とHIV−2の2種類があり、HIV−1の方が主な感染ではありますが、一般的には両者同時の抗体検査が行われています。 WB法が陰性あるいは判定保留で核酸増幅法が陽性の場合は、感染初期の可能性が高いので、数週間後にWB法を再検査する必要があります。 HIV感染者の病態の進展、治療開始時期の判定、治療の経過観察などにはRT−PCR法での定量測定が行われています。 AZT(Zidovudine), ddI(Didanosine), ddC(Zalcitabine), TC(Lamivudine), d4T(Stavudine), Nevirapine, Saquinavir, Ritonavir, Indinavirなど続々と新薬が開発されてきています。 セックスパートナーについてもHIV抗体検査が必要ですが、セックスパートナーが陰性とわかれば、コンドームの使用などにより2次感染を予防すべきです。 直接的な性行為による粘膜接触や感染血液による汚染がない限り感染は起こりません。したがって、握手したりする皮膚接触だけでうつる病気ではないと理解して下さい。感染血液による汚染には、輸血も考えられなくはありませんが、それよりも薬物注射の回し打ちによる注射針による感染が問題です。また、感染に気づかずに妊娠・分娩すると赤ちゃんへの感染が高率(20〜40%)で起こってしまいます(下の項目を参照して下さい)。 治療を中断したり、治療効果が不十分であれば、再発というより病状の悪化によりエイズ関連症候群からエイズへと進展してしまいます。 赤ちゃんへの感染ルートとしては、
1)子宮内感染(経胎盤感染)
の3つが考えられます。2)分娩時の産道感染 3)経母乳感染 子宮内感染は、妊娠末期(特に妊娠35週以降)、子宮収縮などにより母体血が胎児側に流入しやすくなる時期から分娩時にかけてリスクが高くなると考えられています。そこで、妊娠中にHIV抗体検査が陽性の場合は、妊娠期間中に抗HIV薬を服用し、陣痛が起こる前、通常35週前後に予定帝王切開術を受けることで、子宮内感染と産道感染の危険性を避ける努力がなされています。実際、この方法により赤ちゃんへの感染(垂直感染)は2%以下に下がるとされ、HIV陽性妊婦に対し何ら対策の講じられていないアフリカ諸国の垂直感染率: 母乳栄養により赤ちゃんへの感染率を検討した報告では、生後18ヶ月で9.6%の赤ちゃんが陽性となってしまうことから、母乳栄養の危険性が明らかであり、人工栄養が望ましいとされています。 なお、HIV感染妊婦さんの管理は、特殊薬剤の使用などのこともあり、各都道府県の基幹病院で行われているのが実状です。 まずは予防が重要なことは言うまでもありません。感染のリスクが高いと思われる性行為を避け、コンドームの使用を徹底することが大切です。決まったパートナーとしかセックスしていないから大丈夫と思うのは誤りで、いわゆる“遊び人”だけがなる病気ではなく、誰でもが感染しうることを忘れないで下さい。 感染のリスクが高いと思われる機会があった場合は、抗体の陽性化の時期(平均6〜8週間後)までは待機してもよいでしょうが、その後はたとえインフルエンザ様の症状(HIV初期症状)がなくても躊躇することなく抗体検査を受けて下さい。 感染の有無は各地の保健所などで匿名で受けることができます。感染初期から無症期に発見されれば、適切な治療により無症状のキャリアの状態を長期に保つことが可能となってきていますので、積極的に治療を受けるべきでしょう。 妊娠初期に感染症のスクリーニング検査としてHIV抗体検査を受けることも大切です。不顕性感染を発見するちょうどよい機会であり、もしも陽性なら母児感染の予防対策を講じることができます。妊娠初期に医師からエイズ抗体検査をすすめられたら迷わず受けるようにしましょう。 トリコモナスという原虫による感染症です。近年、減少の傾向にはありますが、決してめずらしい疾患ではありません。 カンジダは成熟女性の10〜16%、妊婦さんでは約30%に見られ、常在性に近い状態で認められています。したがって、異常繁殖した時に外陰・腟カンジダ症を発症するわけですが、産婦人科では非常にポピュラーな疾患といえます。 性行為感染症の1つにカンジダ症が分類されているのは、男性の亀頭冠状溝(ペニスの溝部分)におけるカンジダの検出率を検討してみると、未婚男性が5.9%であったのに対し、妻が有症状で腟カンジダ陽性の場合は71.7%、妻が無症状で腟カンジダ陽性の場合は35%と高率(高田の報告)であり、性行為による夫婦間感染が原因と考えられるからです。 毛ジラミは頭ジラミや衣ジラミとは異なる種類のシラミで、体長は1.2〜2mm程度で陰毛に生息しています。陰毛で被われた部分の皮膚を咬んで吸血するため、点状の発赤や丘疹(皮膚の小さな盛り上がり)ができ、強い痒みが出ます。不潔な性行為でうつるため性行為感染症に分類されていますが、最近は増加傾向にあるようです。治療は陰毛を剃り、駆除薬としてフェノトリン粉剤を用いますが、産婦人科というより皮膚科で管理される病気です。 キスによる唾液を介して感染する伝染性単核症(EBウイルス)、精液・腟分泌物を介して感染しうる肝炎、子宮頚管炎の原因となるガルドネレラやマイコプラズマなどがあります。 ![]() |